算数の話

割合の問題で困っている5年生は毎年多いです。

 

これは「具象を捨象して抽象化する」ということがうまく行っていないことが原因です。

 

具体的に言えば、小1のころの「ひとつ10円のチロルチョコを二つ買うといくらですか」といった問題は全て「具象」でできた問題です。

10円、チロルチョコ、二つ。いずれも具体的にイメージできるものばかりです。ところが学年が上がり5年生になると算数はすっかり様変わりして、「8%の食塩水100gに食塩を加えて12%にするには食塩を何g入れるといいですか」なんていう問題に大変身してしまいます。なにしろ食塩は見えても水に溶けた食塩は見えないから困ったものです。似たようなことは他の科目にもあって、理科の植物でいえば、はじめは、花びら、茎、根だった学習が、養分の吸収、光合成、蒸散と見えないものに変わります。電流や力に至っては初めから「見えないもの」の学習です。

社会でも同じようなことがあって、はじめは私たちの町といった学習から始まって、学校、公園、スーパー、役場、消防署など身近なものがやがて全国の都道府県の学習に変わります。

 

この大きな変化を乗り越えるのに必要なことは「量的過剰の質的変化」をうまく利用することです。例えば植物できちんと葉のつくりを学習していれば、やがて学ぶ「光合成」が理解できる。算数で長さの単位や時間の換算をきちんと理解していれば速さがわかるといったようなものです。これによって「具象を捨象して抽象化」することができるようになります。

 

「そういわれても、うちの子はもうすぐ6年生。いまさら戻れない」という声も聞こえてきそうですが、逆にお答えすれば、「通るべきプロセスを通っていないからいつまでも弱い」としか言いようがありません。先人が考え出した学習のプロセスは本当によくできていて、数の性質をきちんと理解していれば割合が。割合がわかっていれば比が。比がわかっていればやがて数学が。と、すべてがつながっていることを忘れてはいけません。伸び悩みには必ずその前につまづいたとまでは言えないものの弱いところが必ずあります。